2012年3月16日金曜日

スタンリー・カウエルのソロ・ピアノ・ライヴが3/17(土)にビルボード東京で!



大好きな、大好きな、大好きなジャズ・ピア二スト、スタンリー・カウエルのライヴが3/17(土)にビルボードで! しかもアルバム『MUSA』セットだなんて! とにかく行くしか、観るしかないです!→http://www.billboard-live.com/pg/shop/index.php?mode=detail1&event=8020&shop=1

以下は、2008年制作のディスク・ガイド『ムジカノッサ・ジャズ・ラウンジ』に際して執筆した原稿です。もちろん
彼のキャリアの一部でしかないのですが、少しでもその魅力が伝われば幸いです。





「Equipoise(エクイポイズ)」ーーそれは2つのものごとの釣り合いをとるーーつまりは「平衡」を意味する言葉。スタンリー・カウエル作曲によるこのメロディーに、ストラタ・イーストからのソロ・ピアノ・アルバム『Musa』で出会ったのは、高校を卒業して間もないころ。それは言葉のない音楽がゆっくりと頭と身体に沁みてゆく、初めての体験でした。振り返れば、本格的にのめり込みはじめていたクラブ・ミュージックとの距離感に多少のジレンマのようなものを抱えていたようにも思えますが、今はまったく違う。その溝は埋まり、やがて地続きとなり、「Equipoise」を共に理解する仲間や友人達にも恵まれています。そして、ビルド・アン・アークの『Peace With Every Step』でのカヴァーには、感謝の念が絶えません。






Stanley Cowell / Musa(Strata-East / 1974)
亡き父に捧げたソロ・ピアノ・アルバムで、タイトルである『Musa』は彼のアフリカン・ネームからとられ、副題には“先祖からの流れ”とある。つまりこのアルバムは、彼のセルフ・ポートレイトと言えるもの。「Abscretions」や「Prayer for Peace」における気高さと、「Equipoise」「Travelin' Man」の静かなる優しさが、絶妙のバランスで同居する。カウエルの作品で最初の一枚と言われるならば、まずはこれを。





Stanley Cowell / Waiting for The Moment(Galaxy / 1977)
フェンダー・ローズとエレクトリック・グランド・ピアノでの自演多重録音に挑んだ第2面が特に素晴らしい。後にトリオで再演される「Sienna:Welcome, My Darliyng」には、カウエルの優しさが滲む。愛娘であるシエンナの名を冠した曲はいくつか存在するが、穏やかな表情で語られる本作に最も彼らしいタッチを見出せる。お馴染みのアフリカン親指ピアノ狙いなら、「Spanish Dancers」も。





Stanley Cowell / Equipoise(Galaxy / 1979)
ベースはセシル・マクビー、ドラムはロイ・ヘインズ。鉄壁のリズム隊と共に描くトライアングル。「Equipoise」でのベース・ソロはセシル・マクビーの残す録音の中でも指折りの名演で、崇高な精神性がそのまま音となって表れる。そして三者が再び合流する様は、言葉にできないほどに美しい。そこにあるのは各々の曲への深い理解と、ピアノ・トリオというフォーマットにおける無限の可能性だ。 



Stanley Cowell / New World (Galaxy/1981)
30年前、すでにある地点にまで到達していたクロスオーヴァー・ミュージックの完成形。慈愛に満ちたイントロに導かれる「Come Sunday」と、よりグルーヴィーに再演される「I'm Tryin' To Find A Way」。その先進性を鮮やかに指摘してみせたのは、ビルド・アン・アークを世に送り出したキンドレッド・スピリッツの手によるコンピレイション『Free Spirits Vol.1』。シーンとは常に、このようにあるべきだ。
※ユニバーサル・ミュージックさんからの世界初CD化に際して、ライナーノーツを担当させていただきました。また後日UPさせていただこうと思います。


Stanley Cowell / We Three(DIW / 1988)
「Sienna:Welcom My Darling」は、何年もの間DJ時に繰り返しプレイし続けてきた“ムジカノッサのテーマ”のような存在。ある夜は松浦俊夫さんが、別の夜にはラファエル・セバーグさんが「これは誰?」と笑顔でブースに来てくれたことを考えると、リリースされた88年からの長い間、もしかすると一部のファンのみが知る貴重な一枚だったのかもしれない。この曲は、あまりにも完璧に思える。





Stanley Cowell / Games(SteepleChase / 1991)
ギャラクシー期の『New Worrd』で披露されていた「Sienna: Welcome To This New World」のスリリングな再演、そして『Mandara Blossoms』でのヴォーカル・ヴァージョンも素晴らしい「From The Rivers Of Our Fathers」。「Abscretion」や「Imagine」を収録のソロ・ピアノ『Angel Eyes』ほか、SteepleChaseでのモダンなアルバム群は、ファンならどれも聴き漏らせない。 







Stanley Cowell / Mandara Blossoms(SteepleChase / 1996)
激動の時代を抜け、たどり着いた平安。場所はコペンハーゲンの名門SteepleChace。自らが見出した歌姫カレン・フランシスを全編に迎えてのヴォーカル・アルバムで、「Equipoise」にも歌詞を与えての披露となる。そして『Games』でのトリオ・ヴァージョンよりもさらにメロウに再演される「Rivers of Our Fathers」。メロディー・メイカーとしてのカウエルの才能を、嬉しくも再確認させられる一枚。

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