HMV発行の「Quiet Corner」最新号がBar Musicに届きました。僕は「“Peace of Music”──スタンリー・カウエル来日公演を終えて」という文を寄稿しています。
“Peace of Music” ―― スタンリー・カウエル来日公演を終えて
まだ学生だったころに手にした、スタンリー・カウエルのピアノ・ソロ・アルバム『MUSA』。特に幾度となく録音が繰りかえされる代表曲「Equipoise」との出会いは、僕のジャズ──強いては音楽の聴き方そのものを正しい方向に導く、「静かなる衝撃」と言えるものだった。先日、たった一夜だけビルボード東京で行われた彼のピアノ・ソロ公演へと足を運んだ。若き日にかのマックス・ローチに見初められ、自作曲を携えレコーディングに参加した『Members, Don't Git Weary』や、立ち上げ〜運営に尽力した伝説のインディペンデント・レーベル、ストラタ・イーストでの戦い時代にはピリオドが打たれ、穏やかで柔和な音像を慈しむように描く。『MUSA』からのレパートリーを、SteepleChaceにおけるピアノ・ソロ『Angel Eyes』(この作品においては、とりわけジョン・レノン「Imagine」のカヴァーに耳を奪われる)のフィーリングで聴かせるような、素晴しい独奏の連続だった。そしてその1stステージの終演後、僕の『MUSA』のLPには“Peace of Music”という直筆のサインが書き添えられた。それはメッセージであると同時に、彼自身を指す言葉であるに違いない。ギャラクシーやDIWに残されたもう一つのフェイヴァリット・ソング「Sienna:Welcome My Darling」は、観ることの叶わなかった2ndステージで披露されたという。
文●中村智昭(MUSICAANOSSA/Bar Music)
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